放課後の教室。荷物を整理し、友人に別れを告げ、私はまっすぐ彼のもとへと向かう。
イヴァン・ブラギンスキ
それが彼の名・・・。
思い出すたび、憎悪が私を支配し、同時に彼に対する哀れみがのちに襲ってくる。
あの人が何をし、奪っていったものの大きさがどれほどのものだったのか身をもってわかっていたはずだ。私の血が近付くなと言い、私の身体が彼を求めて悲鳴をあげる。
変わりゆく自分に戸惑い、あらがってみた所で、侵食された今をまざまざと思い知らされ絶望するだけだった。
~僕はずっと寂しかったんだよ。寒くて暗いあの場所でずっと耐えたんだ~
彼の言葉が、頭の中でリフレインする。
ね…。慰めて、菊。
伸ばされた手を何故振りほどかなかった?
何故あの冷たい手に触れてしまった?
引き戻せないとわかっていたはずなのに…。
「今日、僕の部屋においで?保健室は飽きたでしょ?」
すれ違いざまの囁き。
その瞬間、私は息をのむ。
恐怖と…興奮で。
「待ってたよ菊。さぁ・・・」
今夜もまたその手に触れる。
恋でも愛でもない感情。この関係を言葉で表す事ができるのならば教えて欲しい。
答えが出て私の気が落ち着くならば喜んで受け入れよう。
僕を見てよ。
ええ。ちゃんと見ていますよ。
誰よりも愛しさと憎しみを込めて。