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始まりは欧羅巴クラスの小さな喧嘩。その火種は周りを巻き込み膨らんでいく。
小さな喧嘩が、学校に対する不満、生徒会に対する不満に変わり、やがて職員、友人と、火種は収集がつかないくらい大きなものとなった。
そしてそれは亜細亜クラスへと飛び火をする。
二大クラスを巻き込んだ暴動は、職員だけでは手に負えず、生徒会が出動する事となった。

「私を連れて行ってください。要求は私にあるのでしょう?」
「危ないって!!」
「そうですよ。ここに残っていてください。僕達で何とかしますから」
生徒会室。アルフレッドとマシューは何とか菊を抑えようと、生徒会室まで連れてきた。外に出ては、確実に暴動に巻き込まれる。
密かに恋心を抱いている彼らに、菊の存在はかけがえのないもの。何とかして守ろうと、ここまで引きずってまで連れてきたのだ。
「私が頑固なのお二人はご存じでしょう?」
「本田さん、あなたを守りたい。だから・・・」
「自分の身は自分で守れます!!それに、あなたたちが危険にさらされたのなら、私があなたたちを守ります!!」
やれやれと、アルフレッドは首を振った。やはり素直には従ってくれなさそうだ。
「マシュー、どうやら折れるしかないようだよ?
「ちょっと!!何言ってるんだよアル!!」
「アルフレッドさん。それじゃあ」
「仕方ない。一緒に行こう。正直、戦力不足で困っていた所だ。」
「アル!!」
「菊は俺が守るよ。どんな事があっても、全力でね。マシュー、君より頼りになるだろう?」
煽る様にアルフレッドはマシューを見る。
「冗談じゃない。誓います。身を呈してでも守り抜いてみせますから!!」
「アル!!マシュー!!何やってんだ!!」
「ごめんだぞ!!すぐ行く」
しびれを切らして、探しにきたのはアーサーだった。この非常事態にと不機嫌な顔をしながら、二人の後ろにいた菊に目をやった。
「菊、お前はここにいろ」
「アーサーさんまで・・・私も行きますよ。生徒会なんですから」
「それなら、俺の後ろにいろよ。絶対守ってやるから」
少し赤い顔をしながら、菊の手を取る。
「ずるいぞ!!菊は俺が守るんだからな」
「僕もいるんですからね!!本田さん!!忘れないでくださいね!!」
割って入る様に、アピールする二人に、菊は苦笑いをするしかなかった。本当にこの人達に暴動と止められるのかと一抹の不安を抱きながら・・・。

「何してるアルか!!アーサー!!あっ。菊、お前は危ないから・・・」
「だから・・・もう・・・」
あなたもですかと付け加え、溜息をつく。
「ヴェー!!菊、愛されてるね」
「フェリシアーノ君?!」
「フェリシアーノ。急に抱きつくな。本田が驚いてるだろうが・・・」
「ルートヴィッヒさんも・・・」
「菊が行くなら俺も行くよ?だって大好きな菊がピンチなんでしょ?」
にっこりとフェリシアーノは笑ってみせる。
「フェリシアーノだけじゃ白旗あげるだけだからな。俺も行こう」
「おいおい、フランシス兄さんも忘れてもらっちゃ困るな。なんてったって菊とはオタク同盟なんだからな」
「そろそろ行かないと、暴動は治まらないんじゃない?僕が全て治めてもいいけど・・・」
「イヴァン、それは結構だ。お前にやらせたら全員病院じゃなくて、墓場送りになりかねん」
「アーサー。それは酷いな・・・みんなで仲良くやりたいだけだよ・・・それじゃあ、僕は日本を見ているよ」
「それも危険だろうが!!」
ぞろぞろと大勢で、何でこんな所にいるのか・・・。菊はだんだんと頭が痛くなってくる。
「みなさん、落ち着いてください!!」
「おーし!!誰が菊を守れるか、ここで勝負するか!?」
「良いアルよ!!」
「望むところだ!!」
話は変な方向へとエスカレートし、生徒会内で暴動が起こりかねない事態。これでは収集がつかないと、菊は頭を抱えた。
「やーめーてーください!!・・・わかりました。ここにいます。ここにいますから・・・」
この方法しか止める事ができない。菊はおとなしく生徒会室にとどまる事にした。
ようやく諦めたように窓際の席に座った菊を見届け、
「それじゃあ、俺達は」
「この部屋に誰も入れないように守るだけだな」
「暴動を抑えられたら、今日は宴会でもするか」
「アーサー、君が宴会しようなんて珍しいね」
「うるせぇよ。こっちとら、連日の騒ぎで疲れてんだよ。終わったときくらい騒がせろ」
「僕も賛成。がんばって終わらせましょう!!」
「おっし!!行くぞ!!」
さっきまで騒がしかった生徒会室に、また静寂が戻る。
菊は、もう一度深い溜息を吐くと、
「まんまと皆さんの策にはまったのですかね・・」
と、軽く笑った。自分を守る為に・・・なんて都合の良い解釈をしそうになる。けれど、大切に思ってくれているのは、普段から感じていた事。
それだけに、今回の暴動の沈静化に自分が入らなかったのも、もしかしたらと感じるのは当然の事で。
「やっぱり菊は愛されてるね」
「・・・心中複雑ですけどね・・・って・・・フェシリアーノ君は行かなかったんですね」
「だって、暴力は怖いし!!怪我すると痛いから!!俺はここで菊とおしゃべりしてる方が楽しいもん」
「まったく、あなたって人は」
外の騒ぎと違いなんと平和な事・・・。
それもきっと皆さんが頑張ってくれるからでしょうね。
菊は棚から救急箱を持って、自分の傍らに置いた。せめて、このくらいはしてあげたい。
きっと傷だらけで帰ってくるだろうから。


「菊ー!!擦り傷だぞー!!!」
「はいはい」

さっそく急患がきたようだ。パタパタと駆け寄り手当を始める。
「無茶しないでくださいね」
「ありがとうだぞ!!」
ニッコリ笑って、生徒会室から飛び出していく。
その様子をみながら、まるで子供の喧嘩のようだと笑う。もしかしたら、結構この状況を楽しんでいるのかもしれない。

だって基本血が多い人達だから・・・・。