月明かり、縁側であなたと話した時間。
とても幸せだった事。
この幸せをどうしてもっと早く気づかなかったという事。
寄り添って、微笑んで、隣に居るだけで幸せな自分。
「日本。こっちに来なよ」
そう言われて胸が高鳴った最初と、そのドキドキさえ嬉しい今。
「しょ、しょうがないですね」
「こんな月の日にはビールが最高だね!!」
「おっさんくさい・・・」
「むむ?!俺結構ロマンチストだぞ?」
「どこがですか?だらしない格好で酒のつまみがピーナッツ・・・。ロマンチストを名乗る方が失礼ですよ」
「君、結構ひどいんだな・・・」
「悔しかったら、ロマンチックな事の一つでもしてみたらいかがですか?」
「おっ!言ったな」
「言いましたとも」
こんな他愛もない痴話喧嘩がこの人との心地よい距離なのかもしれない。
「ちょっと待ってて」
アメリカさんは何かを思いついたように電気を消す。月明かりだけが縁側をかすかに照らしていた。
「ムード出るだろ?」
「やましい・・・」
「ちょっ!!」
「ふふっ、月明かりだけっていうのも良いものですね」
この空を、長い間見てきた。月も、星も、ずっとずっと。
「ずっと、君が見てきた月を、俺も見ていたんだ」
「何の事ですか?」
「場所は違えど、ずっと同じものを見てきたって事だよ」
「そうですね・・・」
月だけは変わらず私たちを照らし、時に強く、時に優しく光を届けてくれている。
「アメリカさん、合格ですよ」
「何が?」
「ロマンチック」
「だろ?」
そう、こうやって、いつも私たちを照らしてくれている。離れていた過去も、隣でこうして並んで話をしている今も。
「アメリカさん・・・?」
「あっ、悪い・・・いつの間にか寝てたみたいだ」
話の途中で私の肩にもたれかかって寝てしまっていた。無防備な寝顔はずるいと思う。
全てを許してしまえるくらい、愛らしいと思ってしまうから。
「いいですよ。もう少し寝ててくださっても」
「肩より膝がいいんだけど?」
「なら、そうしてくださっても結構ですよ」
「本当かい?!」
「今日だけです」
特別な時間。見ているのは月だけ。
月は変わらず、照らしてくれる。
幸せで、優しい光を届けてくれる。
「夢を見た」
「何の?」
「君と一緒に初めて縁側で月を見た時の事」
「あぁ、ちょうど私も思い出していた所です。」
そう、あの時も月が出ていた。こんな夜だった。
「アメリカさん・・・」
「何だい?」
「・・・・ありがとう・・・」
「何?もう一回・・・」
「何でもありません」
「気になるぞ?!」
あなたが隣にいてくれる今を私は幸福に思える。
また来年も、再来年もこうして月を眺めていられるのだろうか・・・。
目を閉じて、その日が来る事を願う。
遠い遠い月と星に。