暖かな光を望み、人の絶望を祈る。
全てを手に入れたなら、光りをも手に入れられるとでも思っているのだろうか。
「おい。ロシアはどこ行ったんだ?」
「さぁ・・・」
たぶん、あそこだ。
「探してきますよ」
「心当たりあるのか?」
「ええ。少し」
困ったものだ。あの人には・・・。
「また、ここにいるんですか?」
広い廊下を抜け、ついた先はガラス張りの庭園。
「やぁ」
「どうして、途中で抜け出したりしたんですか?皆さん待っていますよ」
「日の光を浴びに来たんだ。ほら、あの空間て密集してるから息苦しいんだよ」
「身勝手な・・・」
「それに、君が来てくれると思ったから」
待っていた、とでも言いたいのか。
「向日葵・・・あなたの国の国花でしたね」
日の光を一心に受け、大輪の花が見事に咲いている。あなたに不釣り合いの花が…。
「ねぇ、日本。僕はね、僕だけの光が欲しいんだ。暖かで大きな光」
そんなもの、あなたに手に入れられるはずがない。そんな資格なんてない。
残酷な笑顔であらゆる国を陥れて、光が欲しいなど…。
「手に入れられるかな?」
その笑みさえ、黒く塗られているというのに。
「手になんて入れさせませんよ」
平坦と、私は言う。光なんて望んではいけない。あなたには闇に落ちてもらわなくては困る。
「手に入れるさ…。もう、光は見つかったからね」
まっすぐ向けられた視線の先に、自分の姿が映っている。
この人は何を言っているのだろう。
「日本」
その言葉に背筋が凍る。
「君が欲しいな」
その笑顔・・・。
「気味が悪い冗談はやめてください」
「ふふっ。今じゃないよ・・・これからの話」
顔は笑っていても、目だけは鋭く光ったまま。そう、その眼で全てを手に入れてきた。
けれど・・・。
「僕は君が大好きだからね」
「私はあなたを好きになる事はありません。今までも、これからも」
「いいんだ。そうしてもらわないと困る」
「困る?」
「僕は強引に奪う方が好きなんだ。泣き叫んで、僕に許しを乞う君がとても見たいんだよ」
「悪趣味な」
「だから、僕から逃げて。じゃないと、捕まえてしまうよ」
伸ばされた手は白く、不気味なその白さに捕まるまいと思い切り払いのけた。
捕まってたまるか。
あなたには決して捕まったりなんてしない。
「楽しいね。日本」
「どこが・・・」
この人が何を考え、どうしたいかなんて全く興味はない。
ただ、その射程の中に私がいる。
それだけで脅威なんですよ。
逃げなんてしない。
いつか、私があなたを潰してみせる。
誰でもない、私の手で・・・・。