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7月4日PM11:00

片付けも終わり、日本はアメリカとソファーの上でコーヒーを飲んでいた。
一時間前くらいまで盛大に行われていた誕生日パーティーも、今は静けさと少しの余韻が残るだけ。
「今年もあなたの誕生日は盛大でしたね」
「そうかい?」
「ええ。花火なんだか爆発なんだかわからないくらい派手に打ち上げて・・・風情もなにも・・・って、あなたに言っても仕方ないですよね」
「派手にしないとつまらないだろう?あれくらいがいいんだぞ!!」
「そういえばイギリスさん、今年もプレゼントだけ届けて帰られてしまったんですか?」
「そうなんだ。まぁ、しょうがないけどな!!」
「寂しそうですよ」
「そ、そんな事ないぞ!!」
「・・・うそつき」
「・・・日本・・・」
「パーティーの後半に、イギリスさんはプレゼントを届けに来るんですよね?あなたの態度でわかります。イギリスさんが帰られた後は、少し寂しそうに席に着いて、それから振り切るように笑うんです」
「・・・」
「あなたを何年見てきていると思っているんです?私の前では強がったりしないくていいんですよ?」


~イギリス・・・俺やっぱり独立を選ぶよ~

あの時のイギリスの顔をアメリカは思い出したくはなかった。独立を勝ち取る代わりに絆を失った。

「悲しませたくなんてなかった。でも、俺は自分の足で立ちたいと願っていたから・・・だから」

「イギリスさんもわかっていますよ。あなたを本気で憎んでいるなら、あなたにプレゼントを届ける為にわざわざ家まで訪ねてくる事なんてしません。今も可愛い弟のようにあなたを見ていると私は思えますけどね」
小さな子供のように小さく項垂れるアメリカの背をさすりながら、静かな口調でなだめる。その柔らかな声に、耳を澄ましながら、ゆっくり目を閉じた。
「君の声に、俺はいつも救われている気がするよ」
「光栄です」
「でも、俺もヒーローだからな。君がピンチの時はいつでも助けるからな!!

「はい。期待しています」

時間は静かに流れ、あと5分で日が変わろうとしている。
「そうだ。イギリスさんのプレゼントって何だったんですか?」
「あ、そうだ。まだ開けてなかったな」
赤い包み紙で奇麗にラッピングされている小さな箱を開けてみる。
「オルゴールですかね?」
「イギリスらしいな。この装飾は」
蓋を開けてみると、どこかで聞いたような音が流れ出す。
「こ、これは・・・」
「嫌味だろう」
奏でるのはイギリス国歌。
「イギリスの高笑いが聞こえるようだぞ」
「ふっ・・ふふっ」
「日本、これいるかい?」
「駄目ですよ。貰ったものはちゃんと大事にしないと」
「あ・・・」
国歌を奏で終わったオルゴールは二曲目に入る。
「初めて聞く曲ですね」
「これは・・・」
「アメリカさん?」
「子守唄だ・・・。イギリスがよく歌ってくれた」
幼いころの自分がフラッシュバックする。

「イギリスのやつ・・・いつまでも子供扱いして」
「いつまでも、子供のままなんですよ」
「俺は、立派な大人だぞ?」
「いいえ。育てたものとしては、ずっと子供のままなんですよ。だから愛しいし可愛い」
「う・・・」
「ちゃんとイギリスさんにお礼しましょうね?」
「日本も俺の事子供扱いして!!日本は俺の恋人なんだぞ!!」
「ええ。かわいい恋人です」
「違うぞ!日本も可愛いぞ!」
「はいはい。もう寝ましょうね」
「一緒だからな!!一緒に寝るんだからな!!」
「わかりましたよ」


その手にしっかり握られたオルゴールはアメリカの宝物の入っている引出しに入れられる事になった。

そして眠れない夜に取り出され、こっそり蓋を開けている。
懐かしいあの日を思い出しながら・・・。