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いってらっしゃいと彼を見送る。

「行ってくる」

彼も私の頬に短めのキスをして出掛けていく。アーサーさんと同棲をして2ヶ月。最初こそ戸惑いはしたが、今はとても充実した生活を送っている。

そのつもりだった。
あの日がなければ…。

出会いはアーサーさんからの紹介。

「弟のアルフレッドだ」
眼鏡越しに見える綺麗な青い目が印象的な青年だった。
「アルで良いよ。菊、よろしくだぞ! 」
「よろしくお願いします。アルフレッドさん」
「ノンノン。アルだぞ!菊」
思わず笑って人を頷かせるくらい陽気で爽やかな青年。 まさか、その数カ月後にこんな関係になっているなんて誰が想像できただろう。

組み敷かれ、無理矢理唇を奪われる。止めてと言う間も与えないほど何度も角度を変えてそれは繰り返される。
「キスマークか。アーサーってば本当独占欲が強いね」

ちゅっと音を立ててその上をなぞる。
「んっ!」
「 キスマーク…増やしてみるかい?」
「やっ!!」
「 ははっ。冗談だよ。こんなに早くバレたらつまらないじゃないか」
なんて恐ろしい事を言う人なんだろう。
「俺はね、君を独り占めにしていると勘違いして優越感にひたっているアーサーを見るのがとても楽しいんだよ。こんなに俺の前で淫らによがっているのにね!!」
「ひっ!!」
いきなり奥へと突かれ、声が裏返る。
「 関係が壊れてしまう恐怖で歪む君の顔も俺にはとても魅力的だぞ。」
「あぅっ!!あっ! わたし…は、あなたを愛する事はできません」
「 うん。俺もそんな事期待してなんていないさ。君が決して俺の方を見ない事も知ってる」
「だったらどうして」
「深い事考えるの止めにしないかい?理由が欲しいなら、そうだな…セックスフレンド…それで良いか」
「なっ!」
「 気持ちいいだろ?アーサーはこんな事してくれるかい?」
「ん、んんー!!」
「 頭が真っ白になる」
「 昼間は俺で夜はアーサー。君、よほど好きなんだね」
「なっ!」
「インラン」
違う。そう否定したいのに上手く言葉にできない。
「さてと、お喋りはここまでだ」
「うぁっ…あっ」
何度も激しく一点を集中的に攻め立てられる。
「君はここが弱い」
「 ひうっ!」
あまりの衝撃に息が詰まり、整える間もなく執拗にその一点だけを突く。揺らされるたび、声を上げ、さらなる快楽を求めてアルにしがみついた。
「うん。良い反応だぞ」
お互いの息遣いが交わり合う空間。
「アル…もう…」
堪えられず何度も名を呼んだ。助けて欲しくて、この果てのない快楽から解放されたくて、何度も何度も…。
「いいぞ。一緒にイこう」
満足そうに彼は言う。そして、さらに激しく乱暴に私を突いた。
「あっ!!あぁー!」
頭が真っ白になるのと同時に、私の中にアルのものが注ぎ込まれた。
そろそろ夕方だ・・・。そんな事を思いながら、少し眠りについた。


「気が済みましたか?なら、帰ってください」
身なりを整えつつ、アルに促す。
「今日は君の家でご飯を食べる予定だぞ。アーサーにも承諾済みだからな」
「アーサーさんは… 」
「もちろんいるに決まっているだろう?何?俺と二人きりが良かったかい?」

無邪気に笑うアルに恐怖を感じる。
「そんなに怯えなくても俺は何もしないぞ」
この時を恐れていた。
「まだ、この関係を続けたいからね」
耳元で囁かれる言葉に背筋が凍った。身体の関係があるかぎり、私はこの人には逆らえない。
アーサーさんに知られるかもしれない恐怖。しかし、この関係を切る事もできない。
最低なのは私。
身動きが取れずに、快楽と恐怖の入り乱れる底のない沼でもがいている。
「ねぇ。俺が怖い?菊・・・」
怖いですよ。最初に会った時見せたあの笑顔さえ、あなたの策略だったと思ってしまう。
「でも、逃がしてあげないぞ」
えぇ。知っていますよ。あなたにとって最高の玩具なのでしょう?

身体は渡しても、心までは渡したりしない。
どんな事があっても、私はアーサーさんだけなのだから。