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最初はゲームのつもりだった。

アーサーから菊を奪い取れれば俺の勝ち。自分で自由にルールを作り、そのゲームを楽しんだ。

けれど、そのゲームに夢中になりすぎたのかもしれない。
「ね、黙ってて…」
ここまで深い関係になるつもりなかったはずなのに、俺は無理やり菊を抱いていた。
俺の腕の中で必死にもがく。アーサーに対する罪悪感と恐怖に揺れる瞳に快感さえ覚えた。
泣かせたくて、何度も何度も激しく菊の中を突いた。痛みがやがて快楽へと変わり、悲鳴が甘い吐息へと変わった。
無理やりアーサーではない俺の名を呼ばせ、求めさせた。
気がつくと、ゲームの事など忘れ、菊を求めていた。
恋・・・?愛・・・?
身体の関係から始まった俺達の関係はきっとこの言葉が良く似合うんだろうな。

セックスフレンド。

菊は決して俺を好きだとは言わない。俺もそれを求めてはいない。俺はアーサー以上の存在には決してなれない事を知っているから。
けど、アーサーばかりじゃ不公平だろう?
たまにはアーサーの前でも俺の事を考えて欲しい。
あぁ・・・まるで恋してるみたいだ。

「今日は君の家でご飯を食べる予定だぞ。アーサーにも承諾済みだからな」

菊からしてみたら、これは残酷以外の何物でもないだろう。
アーサーに隠れて身体の関係を持っている男と食事をするんだ。しかも愛する男を目の前にして・・・。
青ざめて固まる菊の耳元でさらに残酷な事を言ってみる。
「そんなにおびえなくても俺は何もしないぞ」
少し意地悪をするだけだよ。
「まだ、この関係を続けたいからね」
震える身体を包むように俺は菊を抱きしめた。
さぁ、どうしてやろうか・・・。






それから、菊は一言も言葉を交わす事なく、黙々とキッチンで食事の用意をしていた。二人分ではなく、三人分。
「帰ったぞ・・・って、アル。もう来てたのか」
「あぁ。菊の手料理だからな。いてもたってもいられなくなって早めに邪魔しに来たんだぞ」
「お前、夕飯食ったらさっさと帰れよ」
「俺は客だぞ!!ずっと居座る!!」
「てめぇ・・・」
菊は固まったままだ。それはそうだろう。旦那と愛人の会話を見ている状況だ、固まらないはずがない。
そのまま逃げるように菊はキッチンへ戻る。アーサーは別段気にする様子もなく、自室へ着替えに行った。
「動きが不自然だぞ・・・菊」
「アルっ・・・やめっ・・・んぅ・・・」
後ろから動けないように抱き締め、無理やり唇を開かせる。壁を隔てアーサーがいる。
「アル!!いい加減に・・・」
「大きな声を出すなよ。隣に聞こえるぞ」
「・・・やっ・・・め」
ここで犯してやりたい。アーサーの前で猥らに喘ぐ菊を見せつけてやりたい。
けれど、まだその時じゃないだろう。
「うん。止めてあげるよ」
緩めた手を振り払い、菊は俺を睨んだ。その眼さえ俺を興奮させるって知ってたかい?
苛めてやりたいって思ってわせるんだよ。

「おい。何してんだ?」
菊の顔に色がなくなった。気付かれたと思ったのか、下を向いたまま。そんな敏感にならなくてもいいのに。
「あぁ。もう食事ができたから運んでくれってさ。まったく、君の恋人は人使いが荒いな」
「タダ飯食ってるんだ働けよ」
「はいはい」
皿を取り、すれ違いざま“良かったね”と呟いてみる。あーあ。菊泣きそうだな。
罪で押しつぶされそうだろう?その顔、もっと見たいな・・・。
「菊、大丈夫か?」
「だ、大丈夫ですよ。さぁ、食べましょう」

テーブルに三人。恋人と、浮気相手。はたから見たらすごく不思議な光景だろう。
一切俺とは目を合わせず、言葉も交わさない。それをアーサーが不思議に思わないわけないだろう。まったく、しょうがないな。
「菊はホント小食だな」
「あ・・・」
俺と無理やり話させてあげるよ。アーサーが不思議に思わないくらい。
テーブルクロスで隠れているから、何をしてもわからない。
君が、声をあげさえいなければ・・・。
さぁ、どこまで頑張れるかな?
「だからそんなに細いんだぞ」
「ん・・・そんな・・ことないです」
足で太腿を何度も撫でる。止めてとも睨む事もできず、すがるような目で俺を見ている。そんな顔されたら止められるわけないじゃないか。
「お前は、もう少しダイエットを覚えろ」
「アーサーの美味しくないスコーンを食べるなら断食の方がいいけどね。菊の料理はおいしいから」
股間を刺激されて反応しているのがわかる。顔を赤くして、たまに漏れる息がとても艶めかしい。
何も気づかないアーサーが本当に哀れだよ。
「あっ・・の・・おかわり・・」
うまい交わし方で席を立とうとしているな。
「あぁ。頼む」
「アーサー。たまには自分でやったらどうだい?散々俺に自分の事は自分でやれって言ってきたわりには自分でやらないんだよな」
「おまっ!!」
「俺の居る時くらい、自分でやったらどうだい?」
「菊・・・自分でやるからいい」
俺の言葉通りにアーサーは自分から席を立ち、キッチンへ向かう。
恨めしそうに俺を見ながらも、やはり反応はしているようだ。
「アル・・・もう・・んっ」
「声を出しちゃだめだぞ?気付かれてもいいのかい?」
「だったら!!」
「身体は反応しているじゃないか。ほら」
「あぁっ・・ふ・・んぅ・・」
手で押さえて声を抑えているのに、息が艶めかしく手の隙間から漏れている。激しくそこをせめてやると、その動きに合わせて、菊も腰が揺れているようだった。
「菊も良くなってきたんだね。腰が揺れているぞ」
「そんなっ・・やめっ・・はぁ・・ん」
「ほら・・・イってもいいんだぞ」
「だめっ・・・だめです・・アル・・・はぁ・・んっ・・」
「やらしいな。ダメって言ってる割にはこんなにして、ほら・・イケよ。菊」
「だめ・・・あっ・・あぁっああ!!」
くたりと椅子の背にもたれ、上下した方が小刻みに揺れていた。
「俺は、アーサーにうまく言っておくから、菊は着替えていいぞ」
伸ばした手が勢いよく弾かれる。憎悪の瞳。アーサーには決して見せない憎しみを込めたまなざしで俺を見る。
「あなたはっ・・・」
「君が望んだんだ・・・こうなりたいってね」
「違う・・・」
「うん。じゃあ、それでいい。俺は理由なんていらないんだから・・・君の身体が欲しいだけ」
「最低な人ですね」
「ありがとう。褒め言葉に取っておくよ」
君は俺から逃げられない。
アーサーを裏切って、俺に身体を開いたあの日から見えない鎖で縛られているのだから。


愛してるなんて言葉はいらない。


君を抱いている時だけは、俺は君で満たされているのだから。















あぁ・・・。本当に、重症だな・・・。