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亜細亜クラスと交流会の時に会ったやつの事が忘れられない。
本田菊。名前だけはわかった。
あの日から、俺は・・・。
「一目ぼれだったんだろ?お兄さんが一肌脱いでやろうか?オタク繋がりで知り合いだしな。合コンとか・・・?」
面白そうに人の顔をじろじろと見ながら、フランシスは言う。人の情報に関してはどこから拾ってくるのか・・・生徒会の仕事も満足にしていないくせして、こういう事に関しては熱心に集めてきやがる。
「本気で脱ぎだすの止めろ。お前の手なんか借りなくてもできる」
「手詰まり起こしてんのは誰だよ」
「うるせぇ。それより、提出用の資料さっさと作って来い。俺の帰る時間が遅くなるんだよ」
「お前なぁ・・・。まぁ、無理にとは言わねぇよ。でも、早くしねぇと搔っ攫われるぞ」
「お前に言われたくはねぇよ」
「どこまで強情だよ。それじゃあ、俺は行くからな」
「さっさと行け馬鹿」

確かに、このままではいけないとは思っている。向こうは俺をしらない。一方通行のまま。
「失礼しま…あれ?」
ノックの音と一緒に開かれた扉。
目線の先の人物を見て、自分は幻でも見たのかと錯覚する。
「な…あ…」
うまく言葉が出ない。まさか・・・どうして?
「すみません。ここで部活申請ができると聞いてきたのですが・・・合ってますか?」
本田菊が、俺の目の前にいる。
「・・・違いました?」
「あ・・・いや。誰に聞いたんだ?」
「欧羅巴クラスのフランシスさんです」
「なっ!!」
あいつ・・・余計な事を。
高笑いが聞こえてくるようで余計に腹が立つ。
「それで、部活の申請は・・・」
「あ、ああ。ここでできるぞ。と言っても、必要な人数と顧問が揃った上、会議にかけて3分の2の賛成が条件だからな。却下される事もあるが、構わないか?」
「はい」
「そうか・・・じゃあ、この書類に必要事項を書いてサインをしてくれ」
すらっと伸びた白い手がペンを掴み器用に字を書いていく。
「イラスト…書いているのか?」
何とか話題を作りたいと出た言葉が本田菊のペンの進みを止めた。
「興味…おありですか?」
「え・・・あ・・・ああ。だが、絵は苦手だ」
「絵の技術は後から付いてきます。自分の好きなものを、下手でもいいから伝える事は素晴らしいと思います。そして自分の表現を知って貰う為に、交流を設ける場もあるのです。私はもっとイラスト、漫画、アニメの素晴らしさを亜細亜クラスだけではなく、欧羅巴クラスの方にも知って欲しい!!その為には同好会だけでは小さすぎます」
思っていた以上に本田菊は饒舌だった。
「す、すみません。ベラベラと…」
「いや。参考に・・・なった・・・気がする」
「今度良かったら遊びに来てください」
「いいのか?!」
「はい。もちろんですよ。明日も美術教室を借りてますので、是非」
「わかった。必ず行こう」
「書き終わりました」
「ああ。わざわざ御苦労だったな」
「いえ。イラストに興味がある方とお知り合いになれて私も嬉しかったです」
「あ・・ああ」
俺と知り合いになれて嬉しい・・・。嬉しいっていったか?
「それじゃあ、私はこれで」
「・・・」
「失礼しました」
まだ、心臓がドキドキしてる。俺、あいつと喋ったんだよな?ちゃんと、会話したよな?
「やべぇ・・・どうしよう」
「アーサー」
うげ。フランシスが覗いてやがる・・・。つか、見られた!!
「お兄さんのおかげーだぞぉ」
「う、うるせぇ!!」
「明日が楽しみだねぇ。アーサー」
「てめぇ、どこまで聞いてたんだよ」
「えぇ?どこまでだろう?」
性悪・・・。
「いやぁ、お前がイラストに興味があるとは思わなかったな。俺にはそんな根暗な趣味やめろって言ってなかったか?」
「なっ!?」
「・・・俺が菊の好きな漫画数冊貸してやろうか?」
「いらねぇよ!!」
「会話、弾ませたくねぇの?」
「う・・・」
「まぁ、貸しを作ってやるのも面白いが、今日の夕飯ぐらいの奢りで手を打つよー?」
「・・・ちっ」
「あ。そうだ。菊は生徒会長が嫌いだから気をつけろよ」
な、な・・・。
「前に欧羅巴クラスと亜細亜クラスが自由運動起こした事件あっただろ?」
「あぁ。あのもっと亜細亜に主張させろだの何だの言ってきたあれか」
「その運動を提案したのあいつでさ、突っぱねたの俺だけど表向きアーサーが悪いみたいになってて菊すげぇ毛嫌いしてるから」
「て、てめぇぇl!!」
「ハハハ!!まさかお前が菊に惚れてるとは思わなかったからつい☆」
「じゃあ、何で俺と話してたんだよ」
「あれ?アーサー今日は不在で、部活推進委員が座ってるから部活申請すんならそいつに頼めって言ったから」
「こ、こいつ」
「アーサーの顔は覚えてないみたいだからセーフだろ?」
「セーフじゃねぇよ。これからアウトになるだろうが!!」
「じゃあ、素直に言ってお友達になってぇとか言えばいいだろう」
「それが出来たら苦労しねぇよ!!!!ばかぁぁぁぁぁ!!!!」




俺の恋・・・と言うより、友達からどうやら壁があるらしい。
明日、俺どうしよう。
・・・とりあえずフランシスをボコってから考えよう。