私の目はもう何も映し出してはくれない。
目は見えていても、その全ては私にとって無でしかない。
全てはこの国の為と思っていた。
それはやがて私を蝕み、気づけば私の眼下に無数の屍が幾重にも重なり私を恨めしく見つめる。
こんなつもりではなかった。
もう、遅いのだ。
それならば…。
「いつまでそうしているつもりだい?」
アメリカという脅威を目の前に、私は無残に散るのか?
「もう諦めろと警告したはずだぞ」
数日前に来たあの小太りの中年の事か…。
「あぁ、あなたの上司ですか」
「降伏しろと促したはずだぞ」
弱者を見るような目で私を見ていた。
吐き気さえ覚える。
「君はどうするんだい?」
「ここで降伏したら国民に顔向けができませんから」
「その国民を殺したのは誰なんだろうね」
「あなたも一緒でしょう?」
「正義の為の戦いだ」
「正義の為に人を殺す。何とも曲がった正義ですね」
何が正義だ。
「悪いようにはしない。今からでも」
若く、優しい。そして残酷なのだ…この青年は。
今も銃口を向けたまま、その手を下ろそうとはしない。
私が降伏すると言ったとしても…。
「止まるわけにはいかないのですよ」
あの日の光はもう届かないのだから。
それならばいっそ、散ってしまうまで戦えばいい。
そうして気づくだろう。
いかに愚かで、無力な戦いだったか。
そうしなければ気づきはしないのだ。
今の私は…そして…この世界の混乱は。
「最後にもう一度聞くよ。降伏するつもりは…」
「…」
「その目が答えなんだね…それなら俺も手加減はしない」
さぁ、決着をつけよう・・・。