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「どうしたんですか?」

「なんでもない」

最近の私たちの会話は、その言葉から始まる。

アーサーさんは何も言わないし、私も何も聞かない。それが良い事かも悪い事かも、もう麻痺しているから。英国人と日本人。相容れない人種の前に、私達は揺れそして惹かれあった。

「アーサーさん?」

何も言わず抱きしめる時は、大抵誰かにすがりつきたいくらい辛いと感じる時。少しだけ震えている。

「大好きですよ・・・」

そのたびに私はこう声をかける。その瞬間、震えていたイギリスさんの身体は力が抜けたように震えが止まる。

「菊・・・ごめんな」

言葉少なに彼は言う。

異国人は日本敵と罵られても笑っていられるあなたを強いと感じていた。

こうやって抱き合う前までは。

でも、今のあなたを知る事ができて本当に嬉しく思うのですよ。今まで以上に愛しいと感じる事ができるのだから・・・。



私は日本の核であり、あなたは英国の核。何食わぬ顔で近づいて、恋に落ちた。あなたが英国人で私の敵と知りながら…。
始めこそ驚きはした。情報だけを聞き出すために近づいたのに、あなた本人が重要人物だった事に。けれど、あなたが知らないままならこの関係を続けられると隠し続けてきた。
全て私の責任。
そして恐れていた事態になってしまった。私の肖像が持ち出され、アーサーさんの目に触れてしまった。
これは確実な情報で、もはや逃れられる事もできない事実。
あぁ、全てが終わってしまった。あなたと過ごした時間全てが・・・。

そう、思っていた。けれどあなたは何も言わず、その晩私を抱いた。乱暴に、激しく・・・。私が声を上げる度に唇でその声をも塞ぎ、苦しそうに身体を動かすと、それ以上の快楽で私を支配する。

そんな日が続いている。



そんなに失うのが怖いのですか?



あぁ・・・なんて・・・

カワイソウナヒト





あなたがそうあり続けるのなら、演じ続けてあげましょう。

何も知らないままで・・・。

でもいつか、私があなたの敵だと・・・そう受け入れられる日が来たなら・・・。

迷わず私を殺しに来てください・・・。
誰よりも早く・・・私を捕まえにきて・・・?