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チームFラインとホワイトボードに書かれてある。
2012年副都心の相互直通運転に向けて立ちあげたチーム…なのだが…。

「あ…の。そろそろ会議…始める…か?」
有楽町が恐る恐る口を開く。しかし明らかに顔は引きつっていた。
幸い、何を作るのかは決まっている。
今日は認証だけもらえればいいのだ。サインさえ貰えれば全部丸く収まる。
「上の意見で、ストラップは確定した…から…ね?認証貰いたいから、サインしてくれ…」
「もちろんストラップの順番は西武が上なのだろうな」
「え?」
「はぁ?てめぇは東武の下だろう?」
「はっ!!田舎路線が何をほざいている」
「あははは。目くそ鼻くそですよそれ」
「黙れ副都心。きたねぇ事いうんじゃねぇ。ってか、一緒にすんじゃねぇ」
「まったく、これでは少しも話が進まない。まぁ、東急が一番上なのは間違いないのだが」
「何どさくさにまぎれて余計な事言ってんだよ!!」
「そもそもFラインが気に入らん!!Sラインにすれば良いだろう!!レオラインでも可だ!!223ラインなら尚良し!!」
「はははっ。何の冗談ですかぁ?池袋さん」

これじゃあ纏る筈がない。サインさえすれば良いのに、なんでそれさえも拗れるんだよと頭を抱える有楽町。
その裾をちょいちょいと引っ張る小さな手。
「ん?どうした?西武有楽町?」
「有楽町、わたしはここに居ていいのか?」
大きな椅子にちょこんと座った西武有楽町が心配そうな顔で有楽町を見ている。
他線と共同企画すら経験のない西武有楽町に、この空間は未知だった。池袋がいるのだから自分は必要ないのではないかと、有楽町にその不安を伝えた。
いらないと言われたらすぐ出ていくつもりで…。
「何言ってるんだ?当たり前だろ?西武有楽町の接続がないと西武の電車は横浜に行けないんだ。むしろ池袋より西武有楽町の方が大事なんだと思うけど…これじゃあ意見を言おうにも…ねぇ」
「…そっか」
苦笑する有楽町を見ながら、西武有楽町は嬉しそうに笑っていた。
自分が必要だと言ってくれた。
大事なんだと言ってくれた。
この会議にいてもいいんだと思ったら嬉しくて仕方なかった。

「なぁ、西武有楽町、この状況をどうまとめたらいい?」
ふと、有楽町は西武有楽町に尋ねた。
しばらく首をかしげて考えた後、小さく口を開いた。
「・・・みんな、バラバラでいいんじゃないか?」
バラバラなら好きに付けられる。その答えに思わず有楽町は頷いた。
「そっか。じゃあ、それで」

「おーい!!ちょっといいか?西武有楽町が…」


有楽町の後ろ姿を見ながら、頬杖をついてにっこりと笑った。
どうやら西武有楽町の意見は通ったようだ。感心したように池袋は西武有楽町の元に来ると、数回頭を撫でた。
そして有楽町もありがとうと頭を撫でてくれた。
とても嬉しくて、頬を赤らめて笑った。
そして、一人一人サインをし、会議は無事終了した。




西武有楽町線、新桜台の事務室にあるホワイトボード。会議と書かれたその文字の横に、赤文字で“だいせいこう!!”と付け足されていた。
もちろんそれは、西武有楽町の文字で…。