俺が日本に最初に会った記念すべき日。
でもね、君にはそれ以前に会っているんだ。
ずっとずっと前に・・・・・。
中国に交渉に行くから観光目的でいいから付いてこいって言われて、つまらなそうだったけど付いていった。
結局交渉もうまくいかず、このまま帰るのもと立ち寄ったのが日本だった。
初めて見た島国は、とても新鮮でとても華やかに見えた。そう思わせたのは、ピンク色の花。
そして、ピンク色の花びらの中にいたのが君だったんだ。
1人抜け出して、君の元に駆け寄った。小高い丘を駆け上がって、たくさんの樹に囲まれて・・・。でも、そこに君の姿はなかった。あれは幻だったのか…そう思った瞬間。
「誰かいるんですか?」
声が聞こえ、俺はとっさに樹の陰に隠れてしまった。そっと覗くと、そこには探していた君がいたんだ。
「どうしたんですか?」
樹に隠れきれず、少しだけはみ出した布に気づかれてしまった。言葉も通じない異国の俺を見たらきっとびっくりするだろうな。すこし面白くなって出て行こうとも考えた。けれど、その衝動を抑えじっとしていた。驚かれて逃げ出されても困る。そもそも、指定の範囲内から出るなとあれほど言われてるんだ。今通報なんてされたら後で何を言われるかわからないからな。
「え・・・と・・・」
日本語なら・・・少し教えてもらったのがあるぞ。えっと・・・。
「き・・・れい・・・」
「えぇ。今年も桜が綺麗に咲きましたね」
「きれい」
あぁーこれならもっと勉強しておけばよかったぞ。これじゃあ俺がバカみたいじゃないか!!
「毎年本当に楽しみです。私、桜好きですから」
「す・・き・・・?」
“すき”は知ってるぞ。Likeだ!!
「おれも・・・すき」
「一緒ですね」
そっと覗いた君の顔はすごく嬉しそうだった。その瞬間、胸の高鳴りを感じたんだ。血が逆流する感じ。熱くなって、気持ちが高ぶる感覚がとても心地よくて。
「あの・・・そっちに行っても良いですか?ここじゃ、何か喋りにくいし」
近づいてくる!?何で?!このまま姿を見られるわけにはいかないぞ!!そろそろヒーローは退散しないと!!
見つからないように、下へ続く道を駆け下りた。すごい!!何だかすごくわくわくした!!叫びたい!!すっごく叫びたいぞ!!
「WAAAAAAAAA!!!!!」
周りの目なんて関係なかった。言い表せない感情を爆発させたくて、思いっきり叫んだ。
・・・・そのあと上に殴られた・・・・。
それから、ずっと君の事を考えていた。今頃どうしてるかなとか、あの花は散ってしまったのかなとか・・・。
そして、もう一度日本に行くチャンスがめぐってきた。今度は君と友達になる為の旅。
「はじめまして日本!俺はアメリカだぞ」
君は変わってなんかいなかった。随分時が経ったはずなのに、あの時のままの君がそこにいたんだ。
君はもちろん俺の事なんて知らなくて、少し困った顔で俺を見ていた。
これからもっといっぱい話ができる。もっと君を知る事ができる!!
でもその前に・・・
「くじらと友達になりに来たんだ!!」
上からの命令だからね!!一応遂行しないとだぞ!!!でも・・・なんで俺殴られたんだい??
「開国してよ!!日本!!」
ここから時間が動き出した。
少しずつだけど、日本は心を許してくれたし、他の国とも仲良くやっているみたいだ。
・・・ちょっと妬けるぞ!!
「日本ー!!他のヤツばかりじゃなく俺もかまってくれよ」
「何言ってるんですか。なんだかんだで一番交流があるのはアメリカさんですよ」
「俺、ずっと日本が好きだったんだぞ!!」
「はいはい。私も好きですよー」
「それはLOVE?」
「もちろんLIKE」
「下手なアメリカンジョークは止めて素直になってくれよー」
「私、空気の読めない人を愛せるほど寛大な心を持っていませんので」
「ブー」
「それより、お花見でもしませんか?桜が綺麗な場所を知ってるんです」
「あぁ・・・あの花か」
君との思い出の・・・。
「さ、行きましょう」
差し出された手を取る日がくるなんて、誰が想像しただろう。こんな幸せな時間が来ると俺は想像しかできなかったんだ。
「アメリカさん!!足遅いですよ!!」
日本。
初めて会った時から、好きだぞ・・・。
本当に本当に・・・大好きなんだぞ。