放課後、用事があって寄り道をした帰り、電車の中でエリザベータと一緒になった。
何気なく座った席の隣にまさか座ってるとは気づかず、何か重いものが乗っかってきたと隣を見た時に初めて気づいた。
「ん・・・ん」
疲れているのか、爆睡状態。
電車の中で俺が隣に居るのも知らずに寄りかかってきたのはこいつの方。俺には何の否もない。
起きたら大変な事になるだろうなぁ。毛嫌いしてるヤツが隣にいて、しかも何もしないなんて知ったらすごい事になりそうだ。
“ギルベルト!!何でこんなとこにいんのよ!!最低!!きゃああ!!最低!!!”
目を覚ましたこいつが騒ぎ出す姿が目に浮かぶ。
「起きろよリーザ…。…エリザベータちゃん?言ってる俺が何か気持ちワリィ」
一応・・・起こしたからな。
駅に着くたび、人が少しずつ減り始める。こいつより先に俺降りるんだよな。
俺が降りる一つ前の駅で電車が急停車をした。落ちそうになるリーザを支え、周囲を見渡す。何かあったのか?
~信号故障の為、しばらく停車致します~
人のまばらな車両からアナウンスが聞こえる。しばらくこのままかよ。
幸いこいつが起きる事はなかった。神経が図太いのか、鈍感なのかわかんねぇな。
安全点検のアナウンスが入ってどれだけ時間が経ったのか。
開かない扉、隣から伝わる体温と寝息。
さらっとした髪を撫でてやると、少し身じろぎをした後、また気持ちよさそうに寝息を立てた。
「こいつ、こんなまつげ長かったか?」
こんな近くで顔見たことねぇから気づかなかったが、男どもが騒ぐのもわかる気がするな。
「リーザ」
名前を呼ぶ。それからゆっくりと、リーザの額にキスをしていた。
って!!何やってんだよ!!!
唇が異様に熱い。俺、何血迷ってんだ?相手はあのリーザだぞ。
~お待たせしました。発車します~
やっと動いた電車。やばい・・・益々頭がぐらつく。
降りる駅はもう目の前。こいつ・・・どうすっかな。
「リーザ。起きろ…」
「んー…ローデリヒさん?」
「なっ!!」
何であいつの名前が出てくるんだよ!!
もう少しで扉が開く。思い切って叩き起こしてやろうか。…俺じゃない、あの野郎の名前を呼んだこいつを。
「ちっ!!」
扉が開いたと同時に、俺はリーザの肩を掴んで強引に唇にキスをした。
「じゃーな!!」
自分が何をしたのかよくわからない。けど、よりにもよって、あのローデリヒの名前を呼んだ事が無性に腹が立つ。
あいつが誰を想ってるのか一目瞭然じゃねぇか。
何で俺はこんなにむしゃくしゃしてんだよ。
「くそっ」
駅から家まで全力で走る。こんな事で晴れるとわかっていても、ただ走り続けた。
この気持ちがあいつへの恋だと気づくのはもう少し先の事。
叶わない、恋だとわかるのも、もう少し先の事。